蝕でグリフィスの回想に暗喩される中世の超天才作とは

漫画『ベルセルク』の
最悪の悲劇である「蝕」の最中、
ゴッドハンドの
「ユービック」によって
グリフィスが見せられた
精神世界のビジョン(原風景)について
深く考察している動画です。

動画では、
ビジョンの中に登場する
「糸紡ぎをする老婆」という
さりげない描写に着目し、
これがドイツの文豪・ゲーテの
不朽の名作『ファウスト』、
およびそれを基にした
シューベルトの歌曲への
強烈なオマージュ(モデル)である可能性を
鋭く紐解いています。

ユービックがグリフィスに見せた「原風景のビジョン」

甘い誘惑

ユービックはグリフィスに対し
「これは幻ではない、
お前の意識界における真実(原風景)だ」
と告げ、
彼を過去の記憶へと精神的に引きずり込みます。

城を目指す少年の孤独

下町の路地裏を駆ける
少年時代のグリフィスは、
途中で露店に座り
「糸紡ぎ」をしている謎の老婆に
城への道を尋ねます。

老婆は
「他のみんなは先に行って待っているよ」
と道を指し示します。

屍の山という真実

老婆に言われた通りの道を進むと、
辺りは一瞬にして暗転し、
足元は自分の夢の犠牲になって死んでいった
「鷹の団の仲間たち」や
何万もの人間の無数の屍の山へと変わっていました。

悪魔の洗脳

老婆
(正体はユービックとコンラッドの変装)
は不敵に笑い、
「これが城へ行くただ一つの道さ。
お前は屍を積み上げて
その上を歩むしかない、
今さら引き返せば
お前自身が
ただの屍(無駄死に)になるだけだ」
と語りかけます。

さらに、
グリフィスが最も執着した
「ガッツの幻影」の台詞すらも巧みに利用され、
グリフィスは
「仲間を生贄に捧げる(夢を貫く)」
という冷酷な決断へと
完全に誘導(洗脳)されてしまいました。

「糸紡ぎの老婆」に隠された『ファウスト』との符合

動画では、
なぜビジョン内の老婆の行動が
「編み物」や
「露店の物売り」ではなく、
わざわざ
「糸紡ぎ(車をカラカラと回す描写)」
でなければならなかったのかという
疑問に切り込みます。

シューベルトの歌曲

糸紡ぎの描写から、
1814年に
フランツ・シューベルトが作曲した
高名な歌曲『糸を紡ぐグレートヒェン』がヒットします。

この曲の歌詞(原典詩)のルーツは、
ゲーテの戯曲『ファウスト 第1部』です。

ガッツへの情念と一致する歌詞

劇中でヒロインのグレートヒェンが、
愛するファウストを想って
糸を紡ぎながら歌う歌詞が紹介されます。

「私の安らぎは去り、心は重い。
彼のいない場所は私には墓場だ。
彼の口元の笑み、
目の力、言葉の魔法、そして彼のキス。
許されることなら
彼をこの手に抱きしめ、
彼のキスに
この身が消え失せようとも……」

この
「相手の存在に狂わされ、
その一挙手一投足への
強烈な執着で
身を滅ぼしていく情念」
の歌詞は、
ガッツという存在に心を乱され、
冷静さを失って自滅していったグリフィスの
「ガッツに対する巨大な愛憎・情念」
の精神構造と
完璧に酷似(シンクロ)している、
と動画主は興奮を交えて指摘しています。

物語の構図における『ファウスト』との数々の類似性

さらに
『ファウスト 第1部』
の全体プロットを紐解くと、
ベルセルクの「黄金時代編」との
驚くべき類似性が浮き彫りになります。

悪魔との魂の契約

人生に絶望した老学者ファウストが、
悪魔メフィストフェレスにそそのかされて
「現世のあらゆる快楽・体験」
を得る代わりに、
自身の魂を売り渡す契約を交わします。

これはまさに、
五体満足な肉体を失って
絶望したグリフィスが、
ベヘリットを通じて
ゴッドハンド(悪魔)と血の契約を結ぶ
「蝕のシステム」
そのものです。

恋人の精神崩壊

ファウストと愛し合ったグレートヒェンは、
悪魔の計略が絡んだ
不運の連鎖によって
実の母親や赤ん坊を死なせてしまい、
罪悪感から発狂(精神崩壊)して
牢獄に囚われてしまいます。

これも「蝕」の地獄において、
かつての恋人(グリフィス=フェムト)から
凄絶な暴行を受け、
あまりの恐怖と絶望から
心を閉ざして発狂(精神崩壊)してしまった
キャスカの悲劇的な運命と
見事にリンクしています。

蝕のモデル:「ワルプルギスの夜」の光と闇の反転システム

『ファウスト』の中で
最も有名なエピソードの一つである
魔女たちの饗宴
「ワルプルギスの夜」もまた、
ベルセルクの『蝕』の
強烈な舞台モデルになっていると考察されています。

悪魔の饗宴から光への反転

ワルプルギスの夜とは、
5月1日の聖女ワルプルガの祝日の前夜、
世界中の魔女や悪魔、
怪物、亡霊たちが山に集まって
おぞましい狂乱の宴
(乱ちき騒ぎ)を繰り広げるという
ヨーロッパの伝説です。

最も象徴的なのは、
「前夜の暗黒では
悪魔や魔女たちが跋扈して
狂乱の儀式を行うが、
翌朝になると
すべての闇の化け物は消え去り、
代わりにまばゆい
『光の聖誕の祭典』へと
一夜にして
180度世界が入れ替わる
(表裏一体の反転)」
という宗教的な構造です。

異形の使徒たちが集まって
旧鷹の団を喰らう
凄惨な地獄(闇の宴)を引き起こした
魔王フェムトが、
のちに現世において
全人類から崇め奉られる
美しき救世主
「光の鷹(グリフィス)」
として完璧な受肉(降臨)を果たすという、
本作の持つ最大の不気味な
「光と闇の反転構造」は、
まさにこのワルプルギスの夜のシステムが
土台になっている、
と熱く解説されています。

【動画の結論】

ユービックが見せた幻影の
「糸紡ぎの老婆」という
たった一コマの何気ないディテールには、
中世ヨーロッパの文学最高峰である
ゲーテの『ファウスト』の情念や
悪魔のシステムが高度に組み込まれていました。

三浦建太郎先生は、
単にグロテスクなモンスターバトルを描くのではなく、
こうした古典名作の
芸術的・精神的なエッセンスを
裏で完璧に編み込むことで、
「蝕」というイベントに
不朽の深みと
文学的な説得力を与えていたのだ、

原作者の圧倒的な天才性を
絶賛して締めくくられています。

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