三浦先生が描いたベルセルクの原型を考察

漫画『ベルセルク』の
すべての始まりであり
原点である読み切り作品
『ベルセルク ザ・プロトタイプ』
(1988年、三浦建太郎先生が大学在学中に執筆)
について、
本編単行本との設定の違いや
世界観の共通点を
詳しく考察している動画です。

単行本第14巻の巻末に収録されている
このプロトタイプ版には、
現在の物語にも通ずる
魂や初期構想の断片が
数多く宿っていると解説されています。

1. ガッツの造形や性格の違い(陽気なガッツ)

プロトタイプ版のストーリーは
「ガッツとパックが暴漢に襲われる少女を助け、
彼女の村を牛耳る領主(使徒)を倒す」
という、
本編初期(伯爵編など)に通ずる
典型的な旅のパターンです。

キャラクターの違い

プロトタイプ版のガッツは眼帯をつけており、
もみあげを掻き上げる仕草をしたり、
戦闘中に雄叫びを上げて笑顔を見せたり、
お酒が好きだったりと、
本編よりもどこか陽気で
ニヒルなキャラクターとして描かれています。

「蝕」の構想がまだなかった?

プロトタイプ版では
「目の前で母親を殺された復讐」
のために旅をしており、
本編の「蝕」のような
深い絶望や暗い業(ごう)の描写はまだ薄く、
世界観全体のダークさが
少し和らいでいると分析されています。

「黒騎士(くろきし)」という呼び名

本編のガッツは「黒い剣士」ですが、
ここでは「黒騎士」や「強い騎士」と呼ばれており、
中世ヨーロッパの良き英雄(騎士道)のイメージが裏テーマとして
皮肉交じりに与えられている点が指摘されています。

2. 少女「フリッカ」のビジュアルとグリフィスの原点

ガッツが助けた村の少女
「フリッカ」の見た目が、
本編のグリフィスに瓜二つ(そっくり)です。

このことから、
1988年の時点で
グリフィスという重要キャラクターの
漠然としたビジュアルイメージが、
すでに三浦先生の頭の中に
出来上がっていたのではないかと
考察されています。

3. 敵「ヴラド・ツェペシュ」と使徒の初期設定

実在のモデル

プロトタイプ版の敵は、
15世紀にワラキア公国を支配し、
「ドラキュラ」のモデルにもなった
実在の君主ヴラド3世
(ヴラド・ツェペシュ/串刺し公)
をそのまま取り入れています。

物語が無数の串刺し死体が並ぶ
強烈なビジュアルから始まる点や、
すでに「使徒」という名称が使われ、
「人型から化物(犬頭の姿など)へ変身する」
「己の欲するままを行う」
という根本ルールが

当時から確立されていたことが語られています。

4. 「暗黒神ルアナ」とクトゥルフ神話の影響

作中では、
使徒のバックにいる存在として
「太古の暗黒神ルアナ」
というフレーズが登場します。

これは本編における
ゴッドハンドのさらに奥にいる
「深淵の神」の構想に通ずるものであり、
一神教的な負の絶対神の枠組みが
初期から決められていたことが伺えます。

また、
異形の怪物が
人間を狂気に陥れるコズミック・ホラー
「クトゥルフ神話」からの
強い影響も指摘されており、
使徒のデザインや
「負の力を持った絶対神」という
世界観の根幹は
ラヴクラフトらの作品世界と
リンクしていると考察されています。

5. 『ベルセルク』の不変のテーマ:人か、魔か

物語のラスト、
ガッツの凄まじい執念のセリフの横で、
妖精であるパックが
「(ガッツが)使徒よりも禍々しいものに見えた」
と恐怖を感じる描写があります。

「人間でありながら、
化物以上の狂気を持って魔に抗う」
というこの構図こそが、
のちの連載版ベルセルクの全編を貫く
中心テーマ
(人間として生きるか、人を辞めて魔になるか)
になっており、
デビュー作(原型)に
作家のすべてが詰まっている好例であると
締めくくられています。

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