- 2024/11/21
『ベルセルク』作中屈指の名悪役「血の経典・モズグス様」と信仰の二面性
ダークファンタジーの金字塔
『ベルセルク』の「断罪篇」において、
凄まじいインパクトを放った
作中屈指の名悪役モズグス
(聖鉄鎖騎士団最高審問官)について、
彼を突き動かす
「信仰」の光と闇(二面性)を軸に
深く鋭く考察している動画です。
単なる残虐な悪役ではなく、
中世ヨーロッパの
宗教的リアリティを体現した
彼という存在の本質について、
以下の4つのポイントで要約されています。
1. 中世のリアリティを体現する「異端審問官」の恐ろしさ
血の経典としての悪名
車輪式串刺しや水攻め、
火刑などによって
500人以上を極刑に処し、
拷問の途中で
数倍の人間を死亡させてきた
恐怖の審問官です。
宗教という不可分の要素
『ベルセルク』の舞台は
おそらく13〜15世の後期中世をベースにしており、
当時は宗教(法王庁)が
人々の倫理や精神を
完全に支配していました。
三浦建太郎先生は
この「宗教という時代特有の要素」を
凄まじい濃度とリアリティで描き、
その象徴として
モズグスを誕生させました。
初登場時に
「天誅」という言葉に過剰反応し、
持っていた経典を鈍器にして
罪人を殴り殺すシーンは
読者に強烈な印象を与えました。
2. 強固な信仰がもたらす「光と闇」の二面性
動画では、
モズグスが見せる
「純粋な光(善意)」と
「底知れない闇(暴力)」の対比が
深く考察されています。
信仰の「光」(弱者への本物の慈悲)
彼の行動原理は
「ただ神のために行う」
という極めてシンプルなものです。
彼は本気で貧しい人々を救済しようとしており、
彼が従える異形の
「6人の拷問執行人(弟子たち)」も、
社会から迫害されていた
奇病持ちの孤児だったところを
モズグスに救われた過去を持ちます。
弟子たちにとって
彼はまさに「奇跡の全人」であり、
それゆえに命がけで彼を慕っています。
信仰の「闇」(論理的な暴力の肯定)
一方で、
「神という絶対者の名のもとであれば、
すべての行いが全肯定される」
という思考が
最も恐ろしい闇を生み出します。
自分自身の理屈の中に神を入れることで、
人間は迷いなく、
論理的に残酷な暴力を働き、
他者を平然と殺せるようになります。
※三浦先生は
映画『薔薇の名前』から
大きな着想を得て
この審問官の二面性を描き出しました。
3. ガッツが見抜いた弱点と、モズグス様「四角い顔」の秘密
絶対的な城(信仰)の脆さ
ガッツとの死闘の際、
ガッツは
「一番信じられるもので守っている
(聖書でガードする)ってことは、
裏を返せば
そこが一番脆い(それがないと自分を保てない)ってことさ」
という
本質を突いた名言と共に、
モズグスの肉体をドラゴンころしで貫きました。
自分を信じて現実と戦うガッツに対し、
モズグスは
「絶対的な神(城)の影に隠れて
自らを思考停止させていた存在」
として軍配が上がりました。
四角い顔とマゾヒズム
モズグスは一切の迷いがない
自己完結したキャラに見えますが、
毎日激しく頭や体を地面に叩きつける
「五体投地」を義務付けており、
これによって
骨格が変形して
顔が四角くなっています。
これはファルネーゼが行っていた
「鞭打ち」と同じく、
自らの内にある信仰の揺らぎや迷い、
戸惑いから目を背け、
思考を麻痺させるために肉体へ罰を与えるという
「マゾヒズム的なほころび(色気)」
の現れであると鋭く考察されています。
4. 「モズグスという典型」を経て先鋭化するグリフィス神話
モズグスという強烈な
「信仰者」を描いたことで、
物語のテーマはさらに深くなりました。
現在のファンタジア編では、
受肉したグリフィスを
絶対的な救世主として崇める
「グリフィス教(新生鷹の団)」
が絶賛進行中であり、
鷹の巫女ソーニャや民衆、
側近のロクスらが
かつてのモズグスのように
盲目的に彼を神聖視しています。
モズグスが信じていた神は
姿を見せない概念でしたが、
グリフィスは実際に
「現世に現れて奇跡を見せ、
世界の破壊を止めた
本物の神(絶対者)」
であるため、
民衆の信仰心は
当時よりも遥かに強固で
巨大なものとして上書きされつつあります。
※なお、
後にファルネーゼやキャスカの
「精神世界(夢の中)」で、
モズグス様が彼女たちを守る、
あるいは恐怖の対象(事物)として
コミカルかつ強烈に再登場した演出は、
読者にとっても
非常に嬉しいファンサービスであったと語られています。
狂信ゆえの恐ろしさと、
底辺の社会的弱者を
心から救うという
本物の高潔さを同時に持った
「これ以上ないほど完成された魅力的な悪役」として、
今なおファンから愛され続ける
モズグス様の偉大さを
改めて浮き彫りにする
素晴らしい考察回となっています。